食事動作の自立に向けて 「スプーンの工夫」 |
障害児(者)は、スムースに食べ物を口へ運ぶことが出来ず、食事の自立を大きな目標とされている方も多いと思います。ここでは、食べ物をすくってから口に入れるまでの動作(以下、食事動作)の獲得 を「スプーンの工夫」という点から紹介したいと思います。
〇ヘッド(先端部分)の形状
・スプーンの大きさは、口の幅よりも小さいものを選びましょう。 ・大きいスプーンでは食べ物が口に入りすぎて、ムセてしまう危険性もあります。 一度に可能な嚥下量を確認しましょう。 ・唇を閉じる力(口唇閉鎖力)が弱く、スプーンの上に食べ物が残ってしまう場合は、 深さの浅いものにしましょう。 ・歯で噛んでしまう場合は、表面のやわらかいものを使用しましょう。
〇グリップ(柄)の角度 脳性麻痺児(者)は、手の細かい動きが難しかったり定型的な動きでのスプーン操作が多く見受けられます。このような場合は、スプーンの柄の角度を調節して、スプーンのヘッドが口へまっすぐ入るよう調節する必要があります。その際、すくいやすい角度と口へ取り込みやすい角度が異なり調節に困難を極める場合もあります。 柄の角度調節のみでは難しい場合は、皿の形状やテーブルの高さなどの工夫も必要となる場合が多いです。
〇グリップ(柄)の形状
通常のスプーンでは握ることが出来ないことが多くあります。そのため様々な工夫が施されているスプーンが市販されています(握らなくても良いもの、スポンジなどで柄が太くされているもの、形状記憶ポリマー等で個々人の手の状態に合わせて形を変えられるもの等)。しかし、手や指の複雑な変形等により市販品では対応しきれない場合は、適合するよう作製する必要があります。
スプーン作りの一例を紹介します
準備・自由樹脂/イージーフォーム (いくつかのメーカーから市販されています) 60℃以上の湯につけると柔らかくなります。冷えると硬くなります。 ・スプーン『曲げ曲げハンドル』 (斉藤工業株式会社) 柄を手で曲げることが出来ます。 ・60℃以上の熱湯 ・食器用洗剤 ・冷水
C 固まったら再度熱湯に数秒つけて表面を滑らかに加工します。 洗剤をつけて軽くこするときれいに加工することが出来ます。
ドライヤーを使って表面をやわらかくする方法もあります。 D 柄の角度を調節します(以下の写真は実際の使用例です)
ここでは、「スプーンの工夫」という点で話を進めてきましたが、食事訓練として、食器の工夫 ・姿勢の工夫・テーブルの高さ調整など他にも配慮すべき点がたくさんあります。 また、スプーン操作や捕食時の口唇閉鎖などを学習(訓練)することが必要な場合もあります。(北の療育 第183号掲載)
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